誰もが嫌がる言伝だった。その瞳に如何なる感情が宿ろうとも、そこに隠された真意を汲み取ることの出来る人間にとっては尚更、けれどもそれ故にそれが出来る人間にしか任されることの無い、残酷な宣告者という光栄な所業。何も知らない君は、近付く私の足音をきっと心待ちにしているに違いない。常であればそれは間違い無く愛しい者の奏でる音楽であって、そこに含まれた憂いを敏感に感じ取る余裕は無い筈だから。いつものように嬉しさが顔に出るのを必死に隠し通そうとする優しい表情が凍りつく瞬間を、私は見届けなければならないのだ。優しい君を、傷つける為だけに存在するようなこの言葉を、私は既に手中に収めている。
これは君にとって最も愛しい者が告げる、最も大切な者を失う為の、最も残酷な、言の刃(コトノハ)。 「、報告は以上です」 「生存の、確率、は、」 「恐らく一割にも満たないかと」 「そう、か」 感情を表に出したのは一瞬だったか。それで済んだのは恐らく、血に塗れた私の姿を一目見たその時に感じ取るモノが有ったからなのだろう。時間という絶対の瞬間さえも捕らえられぬようなその変化をも、君は一人で抱え込むつもりなのか。それが君の意思ならばこれ以上は何も言えない。何も出来ない。ここで私が何を言ったところで君は、きっとまたその涙を押し殺してしまうに違いないのだから。 遠く離れていく背中をただ見つめることしか出来ない私を、君はいつまで必要としてくれるのだろうか。 あぁ本当に、私はなんて、無力な。 |
咽び泣く死神
20081128