「波紋は確かにひとつの方が綺麗に見えるんかもしれへん」
「連続した波紋は、お互いを打ち消しあっているだけよ」
「だから雨が嫌いなん?」
「『雨が好き』なんて、気取り屋が自己満足に言うだけの台詞にしか聞こえないもの」
「ごもっとも」


話の始まりはいつも曖昧で抽象的だった。
輪郭のはっきりとしない会話。
ただそれは、いつまでも伸ばし続けた猶予期間でもなんでも無く。
それはまさしく二人の間で交わされた慈しむべき大切な時間の経過。



「故に私には、一滴の落下がより美しく感じられる」
「それが君の望みか」
「そうよ」
「解った、もう会わへんよ」


それでも君が孤独を望むなら。
それを苦痛と感じないのなら、そこに、私の居場所は既に無い。


無言で去っていくの背中に、俺も、雨は嫌いやな。
そう呟いたところで、彼女が同士の存在を喜ぶ筈も無いのは解りきったことなのに。






  

それはどんなに赤い傷口よりも痛い、青色。

20071208